1.ドイツのエネルギーシフトは野心的だ。しかし、実現可能であるドイツ国外の多くの人々は、環境派でさえも、(ドイツが本当にエネルギーシフトをやり遂げられるか)疑問を抱いているようである。しかし、疑わしく思っている人たちであっても、ドイツが目指していること、すなわち、化石燃料エネルギーから再生可能エネルギーや省エネにシフトすることによって産業・経済が発展できると証明しようとする目標については、好意的に受け止めていることだろう。ドイツの「やればできる」という姿勢は、過去20年にわたる経験に基づいている。この間に、再生可能エネルギーは、加速度的に成熟し、信頼性も高まり、価格も予想以上に下がっている。ドイツでは、電力における再生可能エネルギーの割合は、たった10年の間に6%から25%にまで増えた。晴れた日や風の強い日には、太陽光パネルと風車が、国内の電力需要の約半分を供給するところまできている。最近の推計によれば、電力に占める再生可能エネルギーの割合は2020年までに40%を超えると言われ、ドイツの再生可能エネルギー目標を上回りそうである。さらに、多くのドイツの研究機関や政府の関連機関が、その数字を分析し、再生可能エネルギー中心の経済のための堅実なシナリオを開発している。2.ドイツのエネルギーシフトを主導するのは市民やコミュニティドイツの人々は、クリーンなエネルギーを求めている。そしてその人々の多くは、自分でエネルギーを作りたいと考えている。「再生可能エネルギー法」は、再生可能エネルギーによって発電されたすべての電気を優先してグリッド(送電網)に接続することを保証し、適切に利益を得ることができるよう設計されている。2011年までの再生可能エネルギーへの投資の半分以上は小規模な投資家によるもので、大企業は比較的小さな投資しか行っていない。このように、再生可能エネルギーへの転換は、中小規模のビジネスを強くし、地域コミュニティや市民自身に再生可能エネルギーを作り出す権限を与えるものなのである。このことによって、ドイツ全土にわたって地域のエネルギー革命が起こっており、コミュニティは新規雇用や税収増という利益を得るようになっている。欧州全域における経済危機の後においては、これはとても重要な事実である。3.エネルギーシフトは、ドイツの戦後最大のインフラ事業である。それがドイツ経済や新規雇用を強化するエネルギーシフトの経済的な利益は、現状維持ケース(business as usual)による追加コストをはるかに上回っている。エネルギー効率が高く再生可能エネルギーを中心とした経済へ移行するには、2000億ユーロを上回る規模の投資が必要となる。そのため、再生可能エネルギーは、従来型のエネルギーと比べてコストがかかるように思われるだろう。しかし、再生可能エネルギーのコストが徐々に下がっていくのに対し、従来型のエネルギーは徐々に高くなっていくものである。しかも化石燃料は、高額な補助金で支えられており、その価格には、環境影響のコストが含まれていない。輸入エネルギーを再生可能エネルギーに置き換えていくことで、ドイツの貿易収支は改善し、エネルギー安全保障は強化されるのである。すでに再生可能エネルギー部門で、38万人の雇用が国内で創出されている。これは従来型のエネルギーの雇用をしのぐ規模である。この中には製造業に従事する人もいるが、他の多くは、設置やメンテナンス業に従事している。ドイツはこのようにして、他の諸国よりも経済・財政危機をうまくしのぐことができているのである。http://energytransition.de/2013/03/jp/つづく