【ヤンゴン春日孝之】ミャンマー総選挙(8日投票)を前に、最大野党「国民民主連盟(NLD)」を率いるアウンサンスーチー氏は5日、最大都市ヤンゴンで記者会見し、NLDが選挙で勝って政権を握るなら「私が大統領の上に立つ」と述べた。憲法の規定で自身は大統領になる資格を持たないが、大統領を超越して実質的な国家元首になると宣言した形だ。
スーチー氏は大統領候補について「NLDの方針に沿って取り組む人物を充てる。(それが誰か)今は言いたくない」と語った。
「自らは首相になるつもりか?」との質問には、「(過去に)首相職は大統領の下だった。私は大統領の上。(新政権では)全ての重要な政策は私が決める。トップがそうするのは当然だ」と断言。いわば「かいらい」大統領を据えて政権運営する決意を示した。
ただ、憲法規定にそうした地位はない。「違憲ではないか?」との問い掛けに、スーチー氏は「憲法に(禁止)規定がないので何の問題もない」との解釈を示した。
スーチー氏はかねて「大統領になりたい」と繰り返してきたが、軍政期の2008年に制定された憲法の規定で、外国籍の息子がいるため大統領への道を閉ざされている。憲法にない「大統領を超越した地位」発言は、「憲法規定」を盾に大統領への道を阻む現政権や国軍への痛烈なしっぺ返しとも読み取れる。
選挙戦は、テインセイン大統領率いる与党「連邦団結発展党(USDP)」に対してNLDが優勢。公正な選挙が行われるなら、NLDが政権を担う可能性を排除できない情勢になりつつある。
前々回の総選挙(1990年)ではNLDが圧勝したが、当時の軍政はこの結果を無視し、政権に居座り続けた。「今回も(現政権は)権力を移譲しないのでは?」との問いに、スーチー氏は「過去の選挙と今は状況が全く違う。かつてのようなことが起きるとは思わない」と語り、圧勝すれば政権移譲が行われるとの見通しを示した。