昨年12月に「育休取得」を宣言した自民党の宮崎謙介衆院議員(35)が、党幹部のお叱りを受けた。「みんなに迷惑を掛けるな」が理由の一つ。確かに、選挙で選ばれた国会議員は育児・介護休業法の対象外で男性議員の育休制度はない。でも、安倍晋三政権にとって子育て支援や少子化対策は重要課題のはず。何かおかしくありませんか。【堀山明子】
国会議員は対象外
宮崎さんは、会場に入ることすらためらい、暗い表情を浮かべていた。父親業と仕事の両立を目指すNPO「ファザーリング・ジャパン」(FJ)が18日夜、東京・日本橋で開いた緊急フォーラム。会議室の正面スクリーンには「永田町が変われば日本の子育て、WLB(ワーク・ライフ・バランス、働き方)が変わる」とのメッセージが映し出された。主役へのエールだ。
司会者に再三促され、ようやくマイクを握った宮崎さんは次のようにあいさつした。「複雑な状況でして、発言してはいけないことになっています。すぐ退席すべきところですが、皆様のお話を聞かせていただくということで、どうかご配慮ください」。絞り出すような声だった。
パネリストは、2010年に地方自治体の首長として初めて2週間の育休を取得した東京都文京区の成沢広修(ひろのぶ)区長(49)をはじめ、経営者やジャーナリストら十数人で、約200人が議論に耳を傾けた。育休や労働時間短縮を望む男性が上司や同僚のいやがらせで父性(パタニティー)を発揮できない「パタハラ」問題に話題が及んでも、宮崎さんは口を閉ざしたまま。それほど、国会議員の育休取得は困難な道なのだろうか。
ここで育休宣言からの流れを整理しよう。宮崎さんは昨年12月23日、妻の金子恵美衆院議員(37)=自民=とともに1カ月の育休を表明。その後1週間は、自身のブログで「単に休暇を取るためではなく、育児をするライフスタイルを作り出す」などと連日のように育休への思いを訴えた。だが、今月6日に党国対幹部から「評判を落としている」と注意され、8日に谷垣禎一幹事長が記者会見で「議員はサラリーマンとは違う」と消極的な見解を示すと、一気にトーンダウン。それ以降、育休に関する目立った発言はない。
フォーラムを企画した3児の父でFJ代表理事の安藤哲也さん(53)は「父親が育児に参加するのは基本的な人権の問題。誰もが育児をしながらキャリアアップできる社会をどうつくるかが問われている。『育休制度の対象外』とたたいて議論が終わっては困る」と危機感を募らせる。育休取得には、部下の仕事と家庭生活が両立できるよう支援する上司「イク(育)ボス」の役割が重要とも説く。「イクボスが育休を取って模範を示せば社会は変わる。国会議員は全員イクボスになるべきだ」と宮崎さんが一石を投じたことによる波及効果に期待をかける。
そのイクボス、自民党議員ならば党総裁の安倍首相だが、国会議員の育休について質問された12日の国会答弁では「三権分立の中で、議会で決めていただきたい」と述べるにとどめた。安藤さんはこの対応も不満だ。「男性の育休促進は国の方針だと言ってほしかった。パタハラが起きた時、方針を明確に示して止めるのがイクボスだ」
リーダーが模範示せば変わる?
海外の国会議員も育休取得にはさぞ肩身が狭い思いをしているだろうかと調べてみると、どうも違う。イギリス労働党のブレア首相は00年の第4子誕生後に自宅で2週間執務する事実上の育休を取得した。反発を受けたと思いきや、男性の8割から支持を集めた。苦戦と思われた翌年の総選挙で勝利すると、ブレア氏に批判的な保守党系日刊紙デーリー・テレグラフは「勝因は子供4人の父親として信頼できるという首相のイメージだ」と悔しがる記事を掲載した。英国では、男性の育休制度は日本より11年遅れの03年から始まったが、今は6割の男性が取得しており、「ブレア効果」が普及に貢献した可能性は高いと見られる。
フィンランドでは、リッポネン首相が1998年、後に首相となるカタイネン財務相が10年、他に閣僚2人も育休を取得した。国民から議会を休むことへの批判は出なかったのか、東京都港区のフィンランド大使館を訪ねると、意外な答えが返ってきた。「カタイネン財務相の育休中に重要案件の採決があり、野党から批判が出ました。なぜ採決日をずらせなかったのかって。問題になったのは育休の取得ではなく、議会運営のほうなのです」
こう話すのは、今夏の育休取得を検討している1歳児の父、マルクス・コッコ参事官(44)。育休によるマイナス面を尋ねると「見当たりません。だって育休を4カ月取った議員が後に閣僚になり、閣僚は首相に、首相は再選と、みんな出世していますから」と笑った。
フィンランドでは男性の育休取得率が90年代で既に50%台だったが、首相や閣僚の取得によって社会の雰囲気はさらに変わり、今は80%以上に飛躍した。「責任が重いから休めないという考えは消え、育休中の男性の仕事をどう分担するかという議論に変わりました」。コッコさんは意識の変化を強調する。
男性も求める「親時間」の権利
日本の男性の育休取得率は14年統計で2・3%と底をはうような低さだ。海外のようにトップが育休を取れば雰囲気は変わるのだろうか。
前出の成沢さんは取材に対し「上司から部下に育休の取得を勧めれば変わる」と実績を強調した。自身の育休取得と同時に、課長級の上司は男性職員に育休取得を必ず勧めるよう義務づける要綱を策定。毎年変動はあるが取得率が18%までアップした年もある。「ただ、育休中に所得が下がると住宅ローンが払えなくなるとか、家庭によって事情は違う。多様な子育てのあり方の一つとして育休がある。大事なことは、どういう子育てをするかを職場でも一緒に考えることだ」と語る。
3度の育休を取得した情報通信業「サイボウズ」の青野慶久社長(44)はフォーラムの席上、第3子が生まれてからの半年間は午後4時に帰宅した経験を紹介。「社長が早く帰るのを見て、あれでいいんだと社内の空気は変わった。育休や時短で働き方を多様にすると、社員のやる気が上がり、会社の実績も上がる」と、イクボス効果を説明した。また、働きやすい会社というイメージが広まり「大企業からの転職希望者も増え、人材難の時代に優秀な人材を確保できている」と企業競争力もアップしたと解説する。
イクボスたちが力説するのは、育休取得だけでなく、労働時間短縮や自宅勤務など働き方の改革も同時に進める必要性だ。所得が補償される年次有給休暇の活用も呼びかける。
前出の安藤さんは言う。「少子化が子供を産みにくい社会に対する女性の抵抗運動だとしたら、男性が育休を望むのは、長時間労働を強いる社会に、子育てを楽しむ『親時間』の権利を主張する革命なのです」
国会議員の育休の是非だけが焦点ではなく、働き方を変える社会変革が求められている。
「子育てしたいオヤジが居る、ママには不満な母子家庭で暮らす。って、子供が沢山居るはずです。育休取得 @宮崎謙介」http://mainichi.jp/m/?r7To5A 裕(1秒前)
じゃっつ、なくてー子育てをしてきたママを助けるシステムは正しいです。
働くパパが居ます。
らぶ 裕。