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政治献金の流れを知ろう
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- 2016/4/6 6:30
- 日本経済新聞 電子版
1回目は
(1)政治に大きなカネが絡むことは以前よりも少なくなっている。
(2)ただ、議員と秘書の関係が希薄になり、小さな不正を防ぐ監視機能が落ちている。
という話でした。
では、よりクリーンに、小さな不正も減らすにはどうすればよいのかというのが2回目のテーマです。
日本の政治はカネで動かされている。ひところの政治は間違いなくそうでした。日本経済新聞政治部は1983年に「自民党政調会」という本を出版しています。自民党と大企業と官庁が癒着した「政財官の鉄のトライアングル」の実態を明らかにしました。
その当時によく耳にしたのが政治献金の全廃論です。カネが絡むから政治がゆがめられる。だったら、政治家にカネを渡すのは禁止せよという理屈です。
わたしは政治を動かしたい側が一定のカネを出すことはあってよいと考えています。もちろん賄賂を奨励しているわけではありません。
憲法43条に「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」とあります。「全国民を代表する」とはどういう意味でしょうか。「特定の地域や組織などの代表ではなく、全国民のために働く」というのが通説です。
つまり、東京選出の議員が「全国から集めた税金を東京のためだけに使うべきだ」と主張するのは議員のあるべき姿ではないということです。
■さまざまな利益の代弁者が調整
しかし政治の現場では議員のほとんどは自分の選挙区の利益のために奔走しています。比例代表で当選した議員の中には医師会や農協などの言い分の代弁者として送り込まれた人もいます。
全ての議員が国全体のことを考えて大所高所から判断すべきだ――。理想ではありますが、政治の現実とあまりにもかけ離れています。残念ながら人間は神様や仏様ではありません。
女性の声を政治に届かせたいというとき、男性議員に「女性のことも考えて」と頼むよりも女性議員を増やす方がよいと思いませんか。利益代表を送り出す、そのために資金援助することは悪いことではありません。さまざまな利益の代弁者が集まって利害調整する過程こそが「政治」ではないでしょうか。
重要なのは、誰が何の利益を代表しているかを知ることです。
東日本大震災を踏まえ、「これまでより大きな防潮堤をつくろう」という意見と、「大きな防潮堤はつくらず、ほかのことにカネを回そう」という意見があります。
「自分はひとりの犠牲者も出さない街づくりをしたい。防潮堤をなくし、てんでに逃げろは無責任だ」と演説する議員に感動していたら、防潮堤工事を待望する土建業界から献金をたっぷりもらっていた。そういうことがあると、何だよ、と思いませんか。
でも、この議員はこの業界の代弁者と知って聞くと、説明のうまい人を送り込んできているわけですから、「それなりにもっともだ」と思うかもしれません。業界と無関係に、信念から防潮堤がいると考える議員もいるでしょう。
講演などに行くと「誰に投票してよいのかわかりません」と聞かれることがあります。残念ながら、答えはありません。でも、ヒントはあります。自分の選挙区から出馬する政治家の収支を見てみることです。
■ネット検索できる収支報告書も
政治資金収支報告書は国に提出する分と都道府県に届ける分の2本立てなので、少し面倒ですが、最近は総務省などのホームページに載っています。役所まで閲覧に来ないと見せないという地域の方はまずは「役所はネット公開せよ」との署名運動をすることをお勧めします。
聞いたことのない企業名が並んでいてわけがわからない。そうかもしれません。でも、どういう業種の企業が多いかなどは何となくわかります。一般人の政治活動というと、デモや選挙運動員のボランティアを連想しがちですが、時間があるときにネット検索することも立派な政治への関わり方です。
誰の代弁者なのかを調べる人が増えれば、政治家もうかつな献金を受け取れなくなります。闇雲に献金禁止を叫ぶよりも効果があると思います。
秘書の不正を防ぐのはもっと簡単です。連座制を導入すればよいのです。政治資金収支報告書に記載漏れがあった場合、現在は訂正届を出せば大抵はそれでおしまいですし、虚偽記載の罪に問われるのは会計責任者の秘書だけです。
買収などの選挙違反は連座制が導入されてから大きく減りました。政治資金も秘書の不正イコール自分の失職となれば議員は必ず真剣に監督するようになります。
世界で一番、ココロ豊かな大統領が居ます。 @ウルグアイ=ホセ ムヒヤ