6月の株主総会後に経営陣の交代を予定している東京電力ホールディングスは3日、新体制についての記者会見を開いた。会見には現経営陣の数土文夫会長と広瀬直己社長のほか、新会長に就任予定で日立製作所名誉会長の川村隆氏、新社長に就任予定で東電エナジーパートナー社長の小早川智明氏らが出席した。川村氏は「今までと違うレベルの改革が必要だ」などと話した。会見の主なやりとりは次の通り。
――廃炉や賠償、電力・ガス自由化など、課題が山積する中、なぜ会長職を引き受けたのでしょうか。
川村氏「福島への責任を果たしながら経済事業を発展させるのは難題だが、数土会長・広瀬社長が先鞭(せんべん)をつけてくれている。火力発電と燃料調達で中部電力と合弁会社を作って世界的な発展を遂げようとしている。(送配電や小売りなど)ほかの分野でも同じように進んでいくように努力しなければならない。今までとは違うレベルの改革が必要だと考えている。私は会長で、執行役に助言や監督、指導する役割だ。そのためには経験が必要で、私には企業再生の経験がある。77歳でもそれは果たせると考えた」
小早川氏「小売りのトップで2年間全力でチャレンジした。昨年末の東電改革の提言を受け、一部の改革ではだめで、きちんと真っ向からやらないと日本のエネルギー産業が相当影響を受ける。震災から6年間、改革とチャレンジの連続だった。これからも懸命にチャレンジする意気込みで取り組む」
――今回の人事案では大幅な若返りを進めます。人事上で新旧の分離が進んだということでしょうか。また、広瀬社長は大幅な若返りには賛成ではなかったと聞きます。
数土会長「東電は昨年4月まで、本質的には総括原価方式の経営だったが、ここ1、2年は若い社員などの真摯な気持ちやチャレンジ精神は大きな変化だった」
広瀬社長「若返りには反対はしていない。大規模な若返りで(役職に就けず)間が飛んでしまう人がでる。どうやってモチベーションを維持していくか。私自身は東電が好きで、少しでも役に立てるのであれば副会長でも関係ない」
――業界の再編・統合が必要な時期にあって、東電HDの稼ぐ力はどこにあるのでしょうか。
川村氏「再編は火力発電だけでなく、社内では電力と通信の融合で新事業ができないかなどを検討しているようだ。あらゆる分野で再編・統合の可能性は出てくるのではないか。東電は自由市場で乾いたぞうきんを絞るような(努力をする)企業とは違うと認識している。赤字が続いた後に3000億円弱の経常利益に戻した成果はあるが、もう少し積み重ねて年5000億円を目指して改革を進める余地はあるのではないか」
――原子力発電所の新設や増設に対する考えをお聞かせ下さい。
川村氏「私は日本のエネルギーとして、原子力については日本政府のいう20~22%が必要だと思っている人間だ。石油が豊富なアラブ首長国連邦(UAE)ですら原発建設を計画している。中東の動乱などについてもリスク要因として考えなければならない」
――原発が立地する地元と東電HDは信頼関係が築けていません。今後、信頼関係をどう構築しますか。
小早川氏「信頼回復、安全確立は最大のやらなければならないことだ。これまで何が悪かったかも把握して誠心誠意取り組んでいく。原子力だけでなく、東電のすべての事業は安全がベースだと考えている」
(押野真也)