「生きるも死ぬも、面白がらなきゃやってられない」=@樹木希林
いい言葉を聞いたことがない。「少子高齢化」「福祉の縮小」「年金消滅」……。私たちの老後は本当に真っ暗なのか。このまま、ひたすら下流老人化を恐れる人生でいいのか。どこかに突破口はあるはずだ。「年を取るのは怖いですか?」――AERA5月15日号は老後の不安に向き合う現場を総力取材。全身がんを告白した俳優の樹木希林さんに、死生観について聞いた。
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「死ぬときぐらい好きにさせてよ」という、宝島社の広告コピー。あれは私とは違うの。私はふだんから好き勝手しているから。逆に広告の反響が大きくて、驚いたわ。世の中の人はみなさん、そんなに辛抱して暮らしているのかって。最初、話が来たときは顔の部分だけ合成するのかと思ったら、すごいセットを作るじゃない。本当に水に入ったのよ。宝島社も元気よねぇ。
死体の役は全然平気。映画「わが母の記」でも棺桶に入ったけれど、ご遺体の鼻にはふつう脱脂綿が入っているじゃない。「だから入れて」って監督に言ったほど。映画「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」もがんと闘病して亡くなるお母さんの役で、私もそのころ既にがんになっていたけれど、役と自分の状況がオーバーラップしようがそれはそれ。別ものなの。
●好きなのはギャラ交渉
私は(放射線治療で)薬はなにも飲んでいないの。で、よく人に聞かれるのよ。「夜は眠れますか?」って。「はい、よく寝ますよ」。「薬は?」「飲みませんよ」。
食べる物も自由。お酒も控えていない。そうすると「じゃあ、あなたは一体なんなんですか?」って言うから「全身がんですよ」って。でもそれは事実なのよ。
鳥取でホスピスをなさっている
徳永進さんと
谷川俊太郎さんとで、死をテーマに語る会が少し前にあったの。そこで話した知り合いのエピソードなんだけれど。その家の娘さんは海外生活が長い方なのよね。お父さんがいよいよとなったときに家族みんなで駆けつけた。
で、「パパ!」「起きてよ!」ってみんなで必死に願うじゃない。心電図のモニターの波がツーツー、ツーーーって消えそうになると。でもって、そうすると何か聞こえるらしくて、ツーツーってまた波が戻るんですって。「あぁ良かった」ってホッとして。で、またツーーーってなると、「パパー!」「生きてぇ!」ってなる。ところが、「パパー!」って何回も繰り返しているうちに、だんだんみんなくたびれてきちゃったのね。で、何度目かにまたツーーーってなったときに、娘さんが「パパ!生きるのか、死ぬのか。どっちかにして!」って。
爆笑だったわね。死をテーマにした会場中が。でもわかるわよね、この気持ち? さらにこの話は続きがあって、そのあと火葬場で待つじゃない。お骨になるまで。部屋で待っていると、1時間くらいして係の人が報告にきた。そうしたらその娘さん、「みなさーん、いまパパが焼き上がりました」って。
面白いわよねぇ、世の中って。「老後がどう」「死はどう」って、頭の中でこねくりまわす世界よりもはるかに大きくて。
予想外の連続よね。楽しむのではなくて、面白がることよ。楽しむというのは客観的でしょう。中に入って面白がるの。面白がらなきゃ、やってけないもの、この世の中。
で、なに? 仕事で一番好きな瞬間はどんなときかって? ギャラの交渉をしているときよ。「えー、あ……」って。女優本人に直接金額を言わないといけないもんだから、みんな困っちゃうの。面白いわよぉ(笑)。
(構成/編集部・
石田かおる)
『今日の相棒は20代前半の超メタボでした。海洋高校出身だけ在って!?船舶免許を持っている。父親は俺より年下と判明=ワンコインは拒否!。よ)』
http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20170512/asahi_2017051000084.html 裕