小学1年生になると、毎日のように担任教諭から電話があった。前に座る同級生の服に落書きしたり、学校の池のカメを自宅に持ち帰ってきたり。頭を下げる日々が続いた。予定日を繰り上げて産んだりしなければ……。自分を責めた。
凌さんは、小学2年生で受けた知能検査で言葉の理解力が3歳児程度とされた。中学の途中から特別支援学校に移り、自立訓練事業所に進んだ。
昨年の1月17日、2人は初めて、東遊園地の追悼会場を訪れた。月末、凌さんは事業所で調べた震災のリポートを発表し、「また地震が起こると言われて怖いけど、生きたい気持ちが大きい」とまとめた。
4月から働き始めたホームセンターでは、商品の運搬や陳列を担当する。当初店側は、客から質問されたら困るだろうと凌さんに社員用の制服を着せていなかった。だが凌さんは「着たい」と直訴。「出来ることは頑張る。従業員なんで」
「震災で多くのものを奪われたけど、この子の成長だけはずっと近くで見られた」と嘉子さん。もう自分を責めるのはやめにしよう。最近、そう思えるようになってきた。(赤井陽介)