東芝の経営危機の主因である米原子力子会社、ウエスチングハウス(WH)が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請する方針を決めたことが26日わかった。WHが28日にも開く取締役会で正式に決議する見通し。WHは適用申請後の支援先として韓国電力公社グループに協力を要請した。実現すれば東芝はWHを連結から切り離すことができ、再建への道が開ける。
WHは27日(現地時間)に米電力会社などと同法申請に向けて事前に調整する会合を開く予定。WHが手がける米国の2カ所の原子炉建設は、同法適用後も続ける方向で協議中だ。
WHは28日(同)にも取締役会を開き同法適用を決議し、早ければ同日中に申請する。東芝は週内にも開く取締役会でWHの申請を承認する。
適用申請後の有力な支援先候補として、韓国電力公社グループに協力を要請した。同グループはWHと技術協力関係にあり、東芝が主体の英原発計画の運営会社の株式売却交渉も始めている。
東芝の経営危機の主因はWHによる米原発事業だ。建設工事の大幅遅延のほか、原子力建設サービス会社の買収やのれんの減損で、親会社の東芝は2017年3月期に7千億円超の損失を計上する見込みとなった。今後も工期の遅れでWHの損失は膨らむ可能性が高く、同社を切り離すことが喫緊の課題だった。
同法申請に伴い、WHは裁判所管理となり東芝の連結から外れる。東芝とWHは原発発注元である米電力会社などと協議する再生手続きの中でWHの債務を整理し、資産売却や事業再編も進める。
ただ米電力会社などとの調整が遅れれば、申請時期が後ずれする可能性はある。
東芝はWHに約8千億円の債務を保証している。破産法が適用された場合、親会社として建設資金といった同債務を電力会社などに対して履行する意向だ。違約金、将来の損失リスク対応金などで一時的な追加損失が出るもよう。損失は総額で1兆円程度との見方が出ている。まだ不確定な部分も多く「現時点での算出は困難」(東芝幹部)との指摘もある。
東芝は取引銀行団に数千億円の融資を要請しており、半導体メモリー事業の分社・株過半売却で得られる資金も原子力改革に充てる計画だ。
WHがかかわる原発建設計画には米国政府が83億ドル(約9500億円)の債務保証をしているほか、雇用問題も起こりうる。核技術移転にもつながるため、WH再生計画の具体化にはエネルギー行政も含め日米韓の政府間調整も必要となりそうだ。
東芝は14日に発表した再生計画で、海外の原子力事業から撤退する方針を示した。銀行団は同方針を支持しており、主力取引行の三井住友銀行とみずほ銀行はWHの破産法の月内の適用申請を求めていた。