テントで仕事しよう 東急、多摩川でアウトドアオフィス実験
- 2017/11/2 15:01
- 日本経済新聞 電子版=テスト投稿中=削除予定
東京急行電鉄の二子玉川駅(東京都世田谷区)に近い多摩川河川敷で2日、特設テントが並んだ。ふだんはオフィス内で働く人に対し、外に出てテント内で仕事をしてもらおうという「アウトドアオフィス」の試みだ。働く環境を変えてもらえれば、新たな発想も生まれるのではないかと期待する。仕掛けたのは東急電鉄だ。鉄道事業が本業のはずだが、近年は郊外型オフィスの展開にも力を入れる。その狙いとは何か。
■河川敷でブレスト「開放的」
2日午前、電車の走行音が聞こえる河川敷にテントや日よけ用タープが6つ設けられた。テーブルが置かれたテント内では、スーツ姿のワーカーらがノートパソコンを広げて打ち合わせする様子がみられた。午前中だけでも20人を超える人が利用した。
この「アウトドアオフィス」のイベントには主に多摩川沿いに拠点を設ける5社が参加し、体験した。三菱総合研究所はテントを4人で利用。新規事業についてのブレーンストーミングをしていた。ふだんは東京のオフィス街、溜池山王にあるビルで働いているが、新谷圭右研究員(32)は「開放的な空間なのでブレストするにはちょうどいい。社員との距離も近くなったように思う」と話した。
河川敷での取り組みはひとまずは今回限り。東急電鉄の都市創造本部、小林乙哉課長補佐は「今回の反響などをみて次のアウトドアオフィスの展開も考えていきたい」と話す。河川敷は公共の場のため、同社はここで事業展開することを考えていない。それでも河川敷でアウトドアオフィスのイベントを開いたのは、働く場所の象徴になるとみたからだ。
東急電鉄はいま、沿線でオフィスの展開に力を入れている。2016年5月から、自習室のような空間が広がるオフィス「ニューワーク」の展開を始めた。法人契約すれば社員らが自由に使える施設だ。満員電車で通勤しなくても自宅に近い場所で働き、仕事の能率を高めてもらう狙いだ。たまプラーザ駅(横浜市)や自由が丘駅(東京都目黒区)の近くに設けており、10月時点で提携先施設も含めると73カ所に増えた。18年2月までにさらに東京都内などに5カ所設ける予定だ。
■乗客減っても「在宅」推進
同社がニューワークの展開に力を入れると、自社の鉄道路線に乗る人が減ってしまうのではないかといった懸念もある。しかし、東急電鉄は「働き方改革」により在宅勤務などの動きが進むとみて、郊外型オフィスの開設を急いでいる。二子玉川駅では同社が10年以降に大型商業施設を相次ぎ開業させた一方、楽天が本社機能を移してきた。東急電鉄が狙うのはこうした職場と住宅を近接させた街づくりで、二子玉川をそのモデルにしようとしている。アウトドアオフィスも積極的に採り入れる考えだ。
(岩本圭剛)