【奥尻】渡りをするチョウとして知られる「アサギマダラ」が徳島県阿南市から1030キロ以上離れた奥尻町に移動していたことが、昆虫愛好家グループ「道南虫の会」(事務局・函館)の調査で分かった。同会によると、本州以南からの飛来確認は2013年以来2例目で、四国から北上したアサギマダラが道内で確認されるのは初めてという。
奥尻町の成田英博さん(65)が5月30日午前9時ごろ、海難事故の犠牲者らを供養する島北端の霊場「賽(さい)の河原」で、スナビキソウの花に群がる十数匹のアサギマダラを見つけた。そのうちの1匹の羽に「トクスヤ 5・24 KYS482」と記されていた。
成田さんはすぐに、交流のある道南虫の会事務局の対馬誠さん(62)に連絡。対馬さんが調べたところ、阿南市の男性が5月24日に捕獲し、印を付けて放したチョウだと分かった。
アサギマダラは羽を広げると10センチほどになる大型のチョウで、極端な暑さや寒さを嫌って、生存に適した気候を求めて列島を移動することで知られる。虫の会は13年、大分県から上ノ国町に北上したアサギマダラを道内で初めて確認している。
虫の会によると、印を付けたアサギマダラが再捕獲されたのは、日本最北になるという。6年ほど前から捕獲を続けていた成田さんは「羽に記号を見つけたときは『まさか』と驚いた。徳島からはるばる奥尻へ来たのかと思うとよくがんばったと思う」と喜ぶ。
対馬さんは「見つかったチョウは、計算すると1日約170キロ以上移動していることになる。貴重な記録を生かし、今後の生態の解明につなげていきたい」と話している。(古田裕之)