【函館】北大大学院水産科学研究院(函館)、国立科学博物館(東京)などの研究グループは30日、オホーツク海沿岸でツチクジラの新種を発見し、和名を「クロツチクジラ」と名付けたと発表した。同日付の英学術誌「Scientific Reports」(電子版)に掲載された。
鯨類の新種発見は、2014年のオーストラリアウスイロイルカ以来で5年ぶり。クロツチクジラは、国際海棲(かいせい)哺乳類学会が認定する90種目のクジラとなった。
同院の松石隆教授(鯨類学)によると、クロツチクジラの体長は約6メートル。オホーツク海や日本海などに生息する体長9メートルのツチクジラに比べ小さく、色が黒いのが特徴という。
研究グループは、2008年6月に北見市常呂地区の海岸で見つかったクジラの死骸を観察し、新種の可能性があったことから調査を開始。オホーツク海などの海岸に漂着した死骸の遺伝子解析を進めた。
新種とみられたクジラは頭の形がツチクジラやミナミツチクジラと似ていたが、頭部の骨の長さを測定し、種が異なることを確かめた。オホーツク海沿岸で08年から今年6月までに見つかった死骸8頭が、新種のクロツチクジラだった。
地元の漁業関係者からは、以前から「ツチクジラと比べて色が黒く、小さい個体が海にいる。別種では」との指摘があったという。
研究グループは今後、クロツチクジラの回遊ルートや個体数、繁殖場所などを調べ、生態の解明を目指す。松石教授は海岸に漂着したクジラなどを調べる道内の研究者グループ「ストランディングネットワーク北海道」(函館)の代表を務めており、新種発見について「クジラ漂着の情報提供に協力してくれた漁業者らのおかげ」と話す。@伊藤友佳子