国後島でのゴミ焼却施設の建設案=日本がロに新案提示=ロ側の意向に配慮
日ロ両政府が北方四島での共同経済活動として検討中の「ごみの減容対策」を巡り、日本側が資源ごみの分別・圧縮に加え、これまで慎重だった国後島での焼却施設建設も含む新たな事業案をロシア側に提示していたことが分かった。焼却施設建設を強く求めるロシア側の意向に配慮する姿勢を示し、協議の進展につなげる狙いがある。ただ事業費負担のほか、日ロどちらの環境基準に基づいて焼却処分を行うのかなど課題は山積しており、調整は難航が予想される。
日ロ双方の関係者が1日、明らかにした。焼却施設の建設案は8月下旬、ロシア側関係者が根室市を視察に訪れた際、日本側が提示した。内部資料によると、施設は1日8トンのごみの焼却を想定。建設費は約15億円で、工期は環境調査などを含めて2年と試算した。日ロ両政府は13~16日に予定する日本側専門家らの四島視察の結果を踏まえ、焼却施設の必要性などについて改めて協議する見通し。
日本側はこれまで、多額の費用がかかる焼却施設の建設には慎重な立場で、昨年10月にはごみ分別のモデル事業の実施や圧縮・保管施設の建設を提案していた。一方、ロシア側は焼却施設の建設を強く求め、平行線の議論が続いていた。
日本側関係者は「日本から焼却施設の建設を提案したわけではない。ロシア側の要望を踏まえて一例を説明しただけだ」と強調。日本側は今回、500万円程度で導入できるスチール缶とアルミ缶の分別機や缶とペットボトルの圧縮機もそれぞれ提案しており、今後も焼却処分より分別・圧縮を重視していく考えという。ただロシア側には「ごみ処理の近代化には焼却施設が欠かせない」(四島関係者)との声もあり、焼却施設建設を求める動きを強める可能性もある。
ごみの減容対策は、6月の日ロ首脳会談で、「観光ツアー」とともに今秋にも試験事業の実施で合意。今月5日に極東ウラジオストクで行う首脳会談も見据えた調整が続いていた。(ユジノサハリンスク 細川伸哉、根室支局 村上辰徳)