金正恩氏が権力に執着し、金正男氏暗殺を5年前から指示!?。
- 2017/2/15 23:42
【ソウル=峯岸博】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏。マレーシアで殺害されたとみられ、スパイ小説も顔負けの情報が世界を飛び交う。韓国の情報機関、国家情報院によると、正恩氏は自身の体制発足直後の5年前から殺害を指示していた。「偏執的な性格」を理由に挙げたが、浮かぶのは絶対権力への執着だ。
朝鮮中央テレビによると、北朝鮮の平壌で15日、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の誕生75周年を祝う大会が開かれ、金委員長が出席した。正男氏の事件への言及は伝わっていない。序列2位の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長は演説で「金総書記が指導の継承問題を完璧に解決したのは最も貴い業績だ」と強調した。
2011年12月、金総書記が死去し、三男の正恩氏の体制が事実上始まった。長男の正男氏は北朝鮮を離れていたが、国家情報院の報告では、正恩氏は間もなくこの腹違いの兄の暗殺を指示した。スタンディングオーダーと呼ばれる命令は取り消されない限り続く。年が明けると1度、暗殺が試みられた。
正男氏は12年4月に自身と家族の助命を願う書簡を正恩氏に送った。だが北朝鮮の対外工作機関、偵察総局はその後も暗殺の機会をうかがっていたという。
それから約5年。正男氏とみられる男性はクアラルンプール国際空港第2ターミナルにいた。格安航空会社(LCC)専用だ。マレーシア国営ベルナマ通信によると、男性はマカオに向かう搭乗手続き前に襲われた。
毒針を使った、液体をかけた――。具体的な手法は不明だが、国家情報院は「毒物によるテロと強く推定される」と分析する。病院への搬送中に死亡したとされる。
正恩氏にとって正男氏は排除すべき「潜在的な脅威」だったのか。
元北朝鮮外交官は正男氏について「海外生活が長く政治的影響力や国内基盤もない」と話す。後ろ盾とされた親族の張成沢(チャン・ソンテク)氏も13年に正恩氏が処刑した。「明らかになったのは、正男氏を5年間追い続けた正恩氏の執拗な人間性」(元朝鮮労働党幹部)。前出の元外交官は「正恩氏が権力を継承すると決まった瞬間から死が予定された存在だった」と語る。
「正男氏が韓国か第三国への亡命を試み、正恩氏の帰還命令に従わなかったので暗殺を指示した」(北朝鮮専門家)との情報もある。韓国拉致被害者家族会の崔成龍(チェ・ソンヨン)代表は「金日成主席、金正日総書記につながる嫡流は長男である自分で、自分の息子が最高の血統だという話をさかんに流して正恩氏が激怒した」とみる。
正恩氏が最近、最側近の一人で秘密警察組織の国家保衛省トップを解任したことから、同省や偵察総局による正恩氏への「忠誠心競争」が招いた悲劇と見る向きもある。
国家情報院によると、中国当局が正男氏の身辺保護にあたっていた。朝鮮半島での不測の事態に備えて中国が正男氏の擁立を探っていたとの見方がある。トランプ米政権が北朝鮮への強硬姿勢を鮮明にし、体制転覆を狙っているとみた正恩氏が焦り、代わりとなり得る正男氏を殺した、との観測もささやかれる。
中国と関係が深い張氏、正男氏の殺害で「中朝関係の悪化が予想される」(国家情報院)。北朝鮮による核・ミサイル開発は米国に加え、中国への誇示でもある。中国外務省の耿爽副報道局長は15日の記者会見で、中国当局が正男氏の身辺を保護していたかとの質問に「マレーシア側が事件を調査している」とだけ答え、確認を避けた。
日経ニュースメール 2/16 朝版
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